なだいなだ『教育問答』はおすすめ?内容・特徴・今読んでも面白い人をわかりやすく解説

読書

なだいなだ著『教育問答』は、学校、教師、親、しつけ、受験などをテーマに、「そもそも教育とは何なのか」を対話形式で考えていく新書です。1970年代に書かれた本なので、現在の教育事情を直接解説する最新の教育書ではありません。それでも、教育をめぐる考え方の根本部分には、今読んでも考えさせられる内容が多くあります。

特に特徴的なのは、教育制度の知識を覚える本ではなく、当たり前だと思っている「学校へ行くこと」「先生が教えること」「親が子どもを教育すること」を一度疑って考えてみる本だという点です。

教育について正解を教えてもらいたい人というより、「教育とは何をすることなのか」「大人は子どもへ何を求めているのか」を自分で考えてみたい人に向いている一冊です。

『教育問答』とはどんな本?

『教育問答』は、精神科医・作家として知られるなだいなだによる教育論です。中公新書の一冊として1977年12月に刊行されました。紀伊國屋書店の書誌情報では新書判224ページ、ISBNは9784121004888と確認できます。[参照:紀伊國屋書店]

著者のなだいなだは1929年生まれ、2013年没。慶應義塾大学医学部を卒業した精神科医であり、作家としても多数の著書を残しました。筑摩書房の著者紹介では、国立療養所久里浜病院のアルコール依存治療専門病棟に勤務した経歴などが紹介されています。[参照:筑摩書房]

後には『教育問答』と『親子って何だろう』を収録した『なだいなだ全集10』も筑摩書房から刊行されています。

内容は「教育ママ」と著者の対話形式

『教育問答』は、教育についての理論を難しい専門用語で説明し続ける本ではありません。著者と、子どもの教育について悩んでいる母親との対話を通じて話が進みます。

そこで取り上げられるのは、学校とは何なのか、教師にはどんな役割があるのか、親は子どもへどこまで干渉してよいのか、しつけとは何なのか、といった非常に基本的な問いです。

対話形式なので、教育学の専門書より読みやすい一方、単なる育児相談の本でもありません。日常的な疑問から出発しながら、教育の仕組みそのものへ話が広がっていきます。

この本の魅力は「当たり前」を疑うところにある

教育について考えるとき、多くの人は「どうすれば成績が上がるか」「どの学校へ入れるか」「どうすれば子どもを言うことを聞く人間にできるか」と考えがちです。

ところが『教育問答』では、それより一段前へ戻って、「そもそも大人が子どもを一定の形へ当てはめようとすることは教育なのか」という問いを投げかけます。

例えば、ある子どもが学校で評価されにくい能力を持っていた場合、その子を学校の評価基準へ合わせることだけが教育なのでしょうか。それとも、その子自身の特徴を伸ばすことも教育なのでしょうか。本書はこうした根本的な問題を考えさせるタイプの本です。

1970年代の本なのに今でも読める理由

1977年刊行なので、社会状況は現在とは大きく異なります。当時は受験戦争、学歴社会、詰め込み教育などが強く問題視されていた時代です。

そのため、学校制度や社会背景については「これは当時の日本の話だ」と意識して読む必要があります。しかし、親が子どもの成績を気にすること、学校の評価と本人の価値を混同しやすいこと、子どもへ大人の価値観を押し付けてしまうことなどは、現在でも完全にはなくなっていません。

実際、紀伊國屋書店に掲載されている読者レビューでも、受験競争が激しかった時代に書かれた本でありながら「今でも通用する」という趣旨の感想が複数見られます。[参照:紀伊國屋書店]

「教育=子どもを型にはめることなのか」を考えられる

本書を読むうえで重要なのが、子どもを大人が作った基準に合わせる教育への疑問です。

例えば学校では、同じ年齢の子どもたちが同じ時間に同じ内容を学び、テストによって評価されます。この仕組みには効率性がありますが、一人ひとりの興味、得意不得意、成長速度は当然異なります。

そこで「学校で高く評価される子ども=教育に成功した子ども」と単純に考えてよいのかという問題が出てきます。本書の面白さは、こうした普段は疑わない前提へ目を向けさせるところにあります。

親が読むと「教育」と「支配」の違いを考えさせられる

子どもを思う親ほど、「こうしてほしい」「失敗してほしくない」「良い学校へ行ってほしい」と考えることがあります。

もちろん子どもの将来を考えること自体は自然です。しかし、その善意が強くなりすぎると、「本人がどうしたいか」より「親がどういう人間にしたいか」が優先される可能性があります。

『教育問答』は、親が子どもへ何かを教えることと、親の望む価値観へ子どもを従わせることを同じものとして扱ってよいのかを考えるきっかけになります。

教師や教育関係者にも考える材料がある

教師という仕事についても、「知識を教える人」という単純な役割だけでは捉えません。

学校には学習だけでなく、集団生活、規則、評価、進路選択などさまざまな機能があります。その中で教師がどこまで子どもの人生へ関与すべきなのかという問題があります。

教育関係者が読む場合は、本書の考えに賛成する必要はありません。むしろ「ここには同意できない」「現在の学校では事情が違う」と考えながら読むことで、自分自身の教育観を確認できる本です。

教育について「答え」より「問い」が欲しい人向け

タイトルが『教育問答』なので、教育に関する疑問へ明確な答えを提示してくれる本を想像するかもしれません。

しかし実際には、「これが正しい教育です」と一本道の答えを提示するタイプの本ではありません。対話を通じて、自分が当然だと思っていた教育観を揺さぶることのほうが重要です。

読み終えたあとに「正解が分かった」というより、「教育って思っていたより難しい問題なのだな」と感じる人のほうが多いでしょう。

対話形式なので新書として読みやすい

教育論という言葉から、学術論文のような難しい本を想像する必要はありません。基本的には会話を読みながら進められる構成です。

専門的な統計や教育制度の詳細を大量に覚える必要もありません。学校や家庭という身近なテーマなので、自分の経験を重ねながら読みやすいのが特徴です。

224ページという分量も、教育について考える入口としては比較的取り組みやすい長さです。

一方で「本当の対等な対話ではない」と感じる可能性はある

本書を読む際に知っておきたい弱点もあります。形式上は「問答」ですが、著者側の考えがかなり強く前面に出る部分があります。

紀伊國屋書店に掲載されている読者レビューでも、教育について相談する女性側の考えが十分に展開されず、著者の主張が一方的に示されているように感じたという指摘があります。[参照:紀伊國屋書店]

そのため、ソクラテス式の完全に対等な議論を期待するより、対話という形式を使って、なだいなだの教育観を読み解く本と考えたほうが期待とのズレは少ないでしょう。

著者の意見をそのまま正解として受け入れる必要はない

教育論の本では特に重要ですが、著者が専門家だからといって主張すべてが普遍的な正解になるわけではありません。

なだいなだは精神科医として人間や社会を観察してきた人物であり、その視点は本書の大きな魅力です。一方で、1970年代という時代背景や著者自身の価値観が反映されています。

「なるほど」と思うところと、「現在には当てはまらない」と思うところを区別しながら読むことで、むしろ本書の価値を引き出しやすくなります。

最新の教育事情を知る本としては向いていない

現在の学校教育について具体的な情報を求めている場合、この本だけでは十分ではありません。

例えばGIGAスクール構想、不登校の最新動向、ICT教育、大学入試改革、特別支援教育などは当然ながら刊行時には存在しないか、現在とは状況が大きく異なります。

そのため最新制度を知りたいなら新しい教育書を併読し、本書は「教育をどう考えるか」という思想的な土台を考えるために読むのがおすすめです。

受験ノウハウを求める人にも向いていない

タイトルに教育とありますが、中学受験や高校受験、大学受験の攻略法を説明する本ではありません。

「どの塾がよいか」「効率的な勉強法は何か」「子どもの成績をどう伸ばすか」といった実践的な情報を求める場合は、別の本を選んだほうが目的に合います。

むしろ本書は、そのように子どもの人生を受験や成績中心で考えること自体を問い直す方向の本です。

子育てハウツー本とも少し違う

「子どもが言うことを聞かないときはこうする」「叱るときはこう話す」といった具体的な育児テクニック集でもありません。

例えば子どもが宿題をしないという問題が起きたとき、本書的な問いは「どうすれば宿題をさせられるか」だけではなく、「なぜ宿題をすることを大人は当然だと思っているのか」「教育とは本人のためなのか、社会へ適応させるためなのか」と一段深くなります。

即効性は低い一方、一度考え始めると長く残るタイプの読書体験になりやすい本です。

精神科医が教育を論じる意味も面白い

なだいなだは教育学者ではなく精神科医でした。そのため、学校制度そのものだけでなく、人間が他人をどう評価するのか、親子関係がどのように作られるのかという心理的・社会的な部分へ目を向けています。

筑摩書房の著者紹介では、なだいなだは精神科医として勤務する一方、『くるいきちがい考』『心の底をのぞいたら』など、人間や社会をテーマとする多数の著作を残したことが確認できます。[参照:筑摩書房]

教育を「学校の問題」だけでなく「人間関係の問題」として見る視点が、本書らしさの一つです。

なだいなだの他作品を読む入口にもなる

『教育問答』が面白かった場合、なだいなだには人間、社会、精神医療、親子関係などを考える著作が多数あります。

例えば『くるいきちがい考』『お医者さん』『アルコール問答』『いじめを考える』などがあります。特に『いじめを考える』も対話形式で問題を考える作品なので、『教育問答』と相性がよいでしょう。

著者の「常識だと思われているものを別の角度から疑ってみる」文章が好きなら、他の著作にも読み進めやすいです。

『教育問答』がおすすめの人

読者タイプ おすすめ度 理由
教育とは何か根本から考えたい 高い 本書の中心テーマと一致
親として自分の教育観を見直したい 高い 親と子の関係について考えられる
教師・教育関係者 高い 学校や教師の役割を問い直せる
昭和の教育論に興味がある 高い 当時の教育観を知る資料にもなる
哲学的な対話形式が好き やや高い 問いを重ねながら進む
最新の教育制度を知りたい 低い 1977年刊行で情報が古い
受験テクニックが知りたい 低い 実用的な受験指南書ではない
即効性のある子育て術が欲しい やや低い 具体策より教育思想が中心

「何を知りたいか」によっておすすめ度がかなり変わる本だと考えるとよいでしょう。

現在読むなら「時代背景」と「普遍的な問い」を分ける

古い教育書を読むときにありがちな失敗は、書かれている内容をすべて現在へそのまま当てはめることです。

1970年代の学校や家族、受験競争と2020年代の社会では環境が違います。その部分は歴史的な資料として読みます。

一方、「子どもを評価するとはどういうことか」「大人は自分の価値観を子どもへ押し付けていないか」「学校とは何のためにあるのか」といった問いには現在でも考える価値があります。この二つを分ければ、古さがむしろ面白さになります。

古い本だからこそ現在との違いが見える

教育制度は何十年も改革を繰り返してきました。それでも教育をめぐる悩みには驚くほど似ている部分があります。

約半世紀前の本を読んで「この問題はまだ残っている」と感じれば、制度を変えるだけでは解決しにくい問題なのかもしれません。

逆に「ここは現在ではかなり変わった」と気付く部分があれば、日本の教育や親子関係がどのように変化したかを考える材料になります。

中古で安く見つけたなら試しやすい一冊

『教育問答』は古い中公新書なので、新刊書店では入手しにくくなっています。一方、中古書店や古書市場では比較的安価な出品が見つかることがあります。

例えば日本の古本屋では『教育問答』の古書が掲載されており、版によって数百円程度で販売されている例も確認できます。[参照:日本の古本屋]

図書館に所蔵されていることもあるため、購入を迷う場合はまず借りて数十ページ読んでみるのもよいでしょう。

読むときは著者と「反論しながら読む」と面白い

この本では、すべての主張へ納得する必要はありません。むしろ教育論は価値観が大きく関係する分野なので、反対意見が出るのは自然です。

「学校にはもっと規律が必要なのでは」「子ども本人だけに任せることも危険では」「競争にも良い面があるのでは」など、自分なりの反論を書きながら読むと本書との対話になります。

そうすると、単に著者の教育論を覚える読書から、自分自身の教育観を作る読書へ変わります。

教育に関心がない人には優先順位は高くない

評価できる本ではありますが、誰にでも最優先でおすすめできるタイプではありません。

現在、教育、学校、親子関係、子どもの成長などへ特に関心がないのであれば、読みたい小説や社会科学書などを先に読んでもよいでしょう。

反対に、教師になる予定がある、子どもの教育について考えている、自分が受けてきた学校教育へ違和感がある、といった時期に読むと内容がかなり身近に感じられます。

読む優先順位を決める目安

積読の中から読む順番を決めるなら、「教育について答えが欲しいか」ではなく「教育について考えたいか」を基準にするとよいでしょう。

制度やハウツーを知りたいなら新しい本を優先します。一方、「学校って本当に必要なのだろうか」「良い教育とは何なのだろうか」という問いを楽しめるなら『教育問答』を上位へ置く価値があります。

特に古典的な新書や、専門家が一般読者へ語りかけるタイプの思想書が好きな人とは相性がよいでしょう。

まとめ:古い教育書だが「教育とは何か」を考えたい人には今もおすすめ

なだいなだ『教育問答』は、1977年に中公新書から刊行された教育論です。教育、学校、教師、しつけ、親子関係などについて対話形式で考えていく224ページの新書で、後には『なだいなだ全集10』にも収録されました。[参照:紀伊國屋書店][参照:筑摩書房]

おすすめできるのは、最新の教育情報を知りたい人ではなく、「教育するとはどういうことなのか」を根本から考えたい人です。

刊行から半世紀近く経っているため、受験事情や学校制度には時代を感じる部分があります。しかし、子どもを大人の基準へ合わせること、学校による評価、親の期待と本人の意思の衝突など、現在でも残る問題が多数扱われています。

一方、対話形式とはいえ著者側の主張が強く、完全に対等な議論とは感じにくい部分もあります。そのため「なだいなだの考えが正しいか」を判定するより、一つの教育観として読み、自分ならどう考えるか反論しながら読むのがおすすめです。

教育について考え始めるための古典的な新書としては、今でも読む価値があります。子育て、教師という仕事、自分が受けてきた学校教育などに少しでも疑問を感じている時期なら、読む優先順位を上げてもよい一冊です。

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