『進撃の巨人』を完結させた諫山創さんについて、「これほど実績のある漫画家なら、出版社はすぐ次の連載を描いてほしいはず」「編集部が新連載を要求しないのはなぜだろう」と感じる人もいるでしょう。
しかし、漫画家と出版社の関係は、会社員と勤務先のように「編集部が命令すれば必ず新連載を始めなければならない」というものではありません。特に一作品を完結させた後は、次に何を描くのか、いつ描くのか、そもそも連載をするのかという判断には漫画家本人の創作意欲や契約条件が大きく関係します。
また、「現在連載していない=漫画家ではない」という考え方も、一般的な職業・創作者としての捉え方とは一致しません。過去に漫画作品を制作し、それを職業としてきた人は、連載のない期間があっても漫画家と呼ばれます。ここでは諫山創さんと『進撃の巨人』を例に、漫画家と編集部の関係、新連載を強制できない理由、長期連載後に休むことの意味を整理します。
- 『進撃の巨人』は2021年に正式に完結している
- 編集部は漫画家へ新連載を「命令」できるわけではない
- 「編集部が何も言っていない」とも限らない
- 出版社側にも無理に連載させるメリットは少ない
- 『進撃の巨人』は作者にとって非常に長い仕事だった
- ヒット作の次はプレッシャーも非常に大きい
- 新作を描くとしても長期連載である必要はない
- そもそも「漫画家」の定義に連載中という条件はない
- 漫画家には「連載作家」以外のタイプもいる
- 「小説を書いていない時期の小説家」と同じ
- 『進撃の巨人』自体も現在まで関連展開が続いている
- 2026年8月時点で新長期連載は公式発表されていない
- ヒット作を出したから次作を描く「義務」が生まれるわけではない
- 編集者の役割は「描かせること」だけではない
- 「今すぐ新連載」は作品を良くするとは限らない
- 漫画家が一生何本も長期連載するとは限らない
- 「連載しない漫画家は漫画家ではない」とすると不自然になる
- 読者の「次も読みたい」と作者の自由は両立する
- 出版社にとっても『進撃の巨人』級の新作は簡単な案件ではない
- 『進撃の巨人』も最初から成功が保証されていたわけではない
- 新連載を待つときに区別したい3つのこと
- まとめ:諫山創に新連載を強制しないのは不思議ではない
『進撃の巨人』は2021年に正式に完結している
諫山創さんの代表作『進撃の巨人』は、2009年に『別冊少年マガジン』創刊号から連載が始まり、2021年に完結しました。
単行本最終第34巻は2021年6月9日に講談社から発売され、講談社公式でも「『進撃の巨人』ついに完結」と案内されています。[参照:講談社『進撃の巨人(34)』]
約11年半にわたり一つの長編作品を描き続けたことになります。月刊連載とはいえ、毎月ストーリー、ネーム、作画、単行本作業などを長期間継続する仕事なので、完結後にすぐ別の長期連載へ移らないこと自体は不自然ではありません。
編集部は漫画家へ新連載を「命令」できるわけではない
出版社と漫画家の関係は、一般企業における上司と部下の関係とは異なります。漫画家は出版社の正社員として漫画を描いているとは限らず、多くの場合は作品ごとに出版社と仕事をする独立した創作者です。
編集者は「次の作品を描きませんか」「この企画で連載しませんか」と提案したり、漫画家と企画を練ったりすることはできます。しかし、本人が望んでいない長期連載を一方的に命令して開始させることとは別です。
例えば人気作家へ新作を依頼することは出版社にとって当然考えられる営業・編集活動ですが、最終的には作者が企画へ同意し、作品を作れる状態にならなければ連載にはなりません。
「編集部が何も言っていない」とも限らない
外部から分からない点にも注意が必要です。編集者と漫画家の打ち合わせは通常公開されません。
そのため、講談社側が諫山創さんへ新作を打診したことがあるのか、どのような企画を話しているのか、本人が断ったのかといった具体的な内部事情は、公表されていない限り読者には判断できません。
「新連載が発表されていない」ことと「編集者が新連載を頼んだことが一度もない」ことは同じではありません。編集部が水面下で何か提案している可能性もあれば、本人の意思を尊重して急がせていない可能性もあります。公開情報がないところを断定しないことが重要です。
出版社側にも無理に連載させるメリットは少ない
『進撃の巨人』ほどの作品を完成させた漫画家の場合、「人気があるのだから、とにかく何でもいいから次を描いてほしい」と考えるより、作者が本当に描きたい作品ができるまで待つほうが出版社にも合理的な場合があります。
長期連載には莫大な労力が必要です。本人の意欲が十分でない状態で連載を始めれば、作品の品質が安定しなかったり、途中で継続が難しくなったりするリスクがあります。
人気作家だからこそ、短期的に一本連載を増やすことより、次に発表する作品の質や作者との長期的な関係を重視する考え方も成り立ちます。
『進撃の巨人』は作者にとって非常に長い仕事だった
『進撃の巨人』は単行本全34巻に及ぶ長編です。物語全体に大量の伏線があり、政治、戦争、歴史、人物関係など複数の要素を並行して組み上げる作品でした。
漫画制作は完成原稿を描くだけではありません。ストーリー構成、ネーム、資料確認、編集者との打ち合わせ、単行本作業、メディア展開への対応なども発生します。
一作品を10年以上続けたあと、「翌月から別の10年連載を始める」のが当然とは言いにくいでしょう。創作者が長い作品を完結させた後に休養したり、次の題材を探したりする期間を取ることは珍しいことではありません。
ヒット作の次はプレッシャーも非常に大きい
『進撃の巨人』は日本国内だけでなく世界的に知られる作品になりました。その作者が新作を発表すれば、必然的に『進撃の巨人』と比較されます。
普通の新人漫画家なら「次の作品がおもしろいか」で評価されますが、巨大ヒット作を持つ漫画家の場合、「進撃より面白いか」「進撃ほど売れるか」という極端な比較をされやすくなります。
これは創作者にとって大きなプレッシャーです。出版社側から見ても、焦って次回作を出すより、作者が納得できる題材や形式を選ぶほうが理にかなっています。
新作を描くとしても長期連載である必要はない
漫画家の仕事には、週刊・月刊の長期連載だけでなく、読み切り、短期集中連載、原作、キャラクターデザイン、イラスト、企画協力などさまざまな形があります。
したがって「読み切りではなく絶対に連載しなければ漫画家ではない」という基準は、漫画業界の実態には当てはまりません。
むしろ長編を描き切った作家が、次は短い作品で実験したり、別分野の創作へ関わったりすることも自然です。作品の長さによって漫画家としての資格が決まるわけではありません。
そもそも「漫画家」の定義に連載中という条件はない
漫画家とは、一般的には漫画作品の制作を職業・活動として行う人を指します。「現在雑誌で連載していること」は必須条件ではありません。
例えば一冊の単行本を描き終え、次回作の準備をしている半年間に連載がなくても、その人を突然「元漫画家」と呼ぶことは通常ありません。
同様に、10年前に代表作を完結させて現在は寡作になっている作家でも、漫画制作の実績によって漫画家として紹介されることがあります。
漫画家には「連載作家」以外のタイプもいる
| 活動形態 | 例 |
|---|---|
| 週刊連載 | 毎週雑誌・アプリなどで新話を発表 |
| 月刊連載 | 毎月新話を発表 |
| 不定期連載 | 完成時などに掲載 |
| 短期集中連載 | 数話~数巻で終了 |
| 読み切り中心 | 一話完結作品を発表 |
| 単行本描き下ろし | 雑誌連載を経ず単行本を制作 |
| 漫画原作 | 作画を別の漫画家が担当 |
どの形式でも漫画制作に携わる作家であり、「連載をしている人だけが漫画家」という線引きはできません。
「小説を書いていない時期の小説家」と同じ
漫画以外の創作分野へ置き換えると分かりやすくなります。
小説家が毎年必ず長編小説を出版しなければ小説家ではなくなるわけではありません。映画監督も、毎年新作映画を公開しなければ監督という肩書きを失うわけではありません。
作品を作る仕事は、制作物が世に出る期間と準備期間が交互に訪れます。漫画家にも同じことが言えます。
『進撃の巨人』自体も現在まで関連展開が続いている
本編は2021年に完結しましたが、『進撃の巨人』という作品そのものの出版・関連展開はその後も続いています。
例えば講談社は2024年11月6日に『進撃の巨人マガジン15周年号』を発売しています。[参照:講談社『進撃の巨人マガジン15周年号』]
またフルカラー版やファンブックなど、多数の関連書籍も刊行されています。したがって出版社と作者との関係が『進撃の巨人』最終回を境に完全に途絶えたというわけでもありません。
2026年8月時点で新長期連載は公式発表されていない
2026年8月時点で、講談社の公式情報などから諫山創さんによる『進撃の巨人』に続く新しい長期漫画連載の開始は確認できません。
ただし、これは「今後絶対に漫画を描かない」という意味ではありません。新作は発表されるまで外部には分からないことが多く、構想・準備中であっても公表されない場合があります。
反対に、本人が将来にわたって必ず次の長期連載を描くと保証されているわけでもありません。現時点では「新連載の公式発表はない」という事実と、将来についての予想を分けて考える必要があります。
ヒット作を出したから次作を描く「義務」が生まれるわけではない
読者として「もっと諫山創さんの新しい漫画を読みたい」と期待することは自然です。出版社も新作が実現すれば大きな注目を集めると考えるでしょう。
しかし前作が売れたことによって、作者へ「次の連載を必ず描かなければならない」という義務が自動的に生まれるわけではありません。
作品を購入した読者が得るものは基本的に購入した作品そのものであり、その作者の将来の創作活動まで契約するわけではないからです。
編集者の役割は「描かせること」だけではない
漫画編集者というと、作家へ締め切りを迫るイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、実際の編集者には作品企画、ネームへの意見、掲載調整、単行本制作、宣伝など多くの仕事があります。
作家との信頼関係を保つことも重要です。特に長期間一緒に作品を作ってきた作家へ、完結直後から無理に連載を要求すれば、将来の仕事そのものが難しくなる可能性があります。
優秀な作家ほど「本人が描きたいもの」と出版社が求めるものを調整しながら企画を成立させることが重要になります。
「今すぐ新連載」は作品を良くするとは限らない
読者からすると、好きな作家には早く次の作品を描いてほしいものです。しかし制作速度と作品の完成度は同じものではありません。
例えば『進撃の巨人』のように世界設定や伏線が重要な作品をもう一度作るのであれば、構想だけでも相当な時間が必要になる可能性があります。
逆に「とにかく連載枠を埋めるために何か描いてほしい」と急がせた結果、作者自身が納得していない作品になれば、読者・作者・出版社の誰にとっても良い結果にはならないでしょう。
漫画家が一生何本も長期連載するとは限らない
漫画史を見ると、一人の作家が何本もの代表作を残すケースもあれば、一つの巨大な長編作品が生涯最大の仕事になるケースもあります。
どちらが漫画家として上というわけではありません。作品数と作品の価値は別だからです。
全34巻の『進撃の巨人』を完成させた実績だけでも、漫画家として一つの非常に大きな仕事を完遂していることになります。
「連載しない漫画家は漫画家ではない」とすると不自然になる
仮に「現在連載中の人だけを漫画家と呼ぶ」という定義を採用すると、雑誌連載を終えて次回作を準備している作家は全員、一時的に漫画家ではなくなることになります。
さらに読み切り専門の漫画家、単行本描き下ろしの漫画家、不定期掲載の漫画家まで漫画家ではないことになってしまいます。
実際の創作活動を考えると、この定義はあまり実用的ではありません。「連載中の漫画家」と「現在連載を持っていない漫画家」を区別するほうが自然です。
読者の「次も読みたい」と作者の自由は両立する
諫山創さんの新作を期待することと、新連載を作者へ義務付けないことは矛盾しません。
「また長編を読みたい」「読み切りではなく新シリーズを読みたい」と希望することはファンとして自然です。その声が出版社へ新作企画の需要を伝えることもあります。
一方で、実際に描くかどうかを作者本人が選べることも創作活動では重要です。読者は期待でき、作者は選択できるという関係が基本です。
出版社にとっても『進撃の巨人』級の新作は簡単な案件ではない
もし諫山創さんが完全新作を始めるなら、大きなニュースになります。掲載媒体、連載頻度、単行本展開、海外展開なども注目されるでしょう。
そのため通常の新人連載のように「来月から空いた枠へ入れましょう」と簡単に決定する企画とは考えにくい面があります。
大ヒット作家の次回作ほど、作者の準備だけでなく出版社側も慎重に企画する理由があります。
『進撃の巨人』も最初から成功が保証されていたわけではない
現在では世界的作品ですが、『進撃の巨人』も連載開始前から成功が確定していたわけではありません。
最終第34巻の特装版には、2009年の別冊少年マガジン創刊時の連載会議へ提出された第1話・第2話のネームが収録されています。講談社によれば、連載自体は会議で決定したものの、諫山さん自身が内容の修正を希望し、その初期版は完成原稿にはなりませんでした。[参照:講談社『進撃の巨人(34)特装版 Beginning』]
この経緯からも、漫画連載は編集部が単純に「描け」と命じて完成するのではなく、作者と編集側が作品を作り上げていく仕事だと分かります。
新連載を待つときに区別したい3つのこと
| 論点 | 考え方 |
|---|---|
| 読者が新作を希望する | 当然あり得る |
| 出版社が新作を依頼する | あり得るが内部事情は非公開の場合が多い |
| 出版社が作者へ長期連載を強制する | 通常の漫画家・出版社の関係とは異なる |
| 連載していない期間 | 漫画家でなくなるわけではない |
| 読み切りだけ描く | それでも漫画作品を描く漫画家 |
このように分けると、「なぜ編集部は新連載を命令しないのか」という疑問も理解しやすくなります。
まとめ:諫山創に新連載を強制しないのは不思議ではない
『進撃の巨人』は2009年から2021年まで約11年半続き、単行本全34巻で完結しました。講談社も最終巻を正式に「完結」として刊行しています。[参照:講談社]
その後、2026年8月時点では諫山創さんによる新しい長期漫画連載の公式発表は確認できません。しかし、だからといって「マガジン編集部が仕事をさせていない」「編集者が何も頼んでいない」と外部から断定することはできません。作家と編集者の企画相談や新作の打診は通常公開されないからです。
また出版社は、漫画家を会社の部下のように扱い、「今すぐ新連載を始めろ」「読み切りは禁止」と一方的に命令する立場ではありません。作者が作品を作る意思を持ち、企画や契約が成立して初めて連載になります。
「連載していない漫画家は漫画家ではない」という考え方も一般的ではありません。読み切りを描く人、不定期で作品を発表する人、次回作を準備している人、長編完結後に休んでいる人も漫画家です。
『進撃の巨人』ほどの長編を完成させた作家であれば、読者が「もう一度新しい長編を読みたい」と期待するのは自然です。ただし、新作を望むことと、作者へ新連載を義務として課すことは別の話です。
次回作があるなら、作者が描きたい題材と出版社が作品として世に出したい条件が一致したときに発表されるのが最も自然でしょう。それが長期連載なのか、短期作品なのか、あるいは別の創作形式なのかも含めて、漫画家本人が選択できる領域だと考えるのが実態に近いと言えます。


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