ミステリー小説を読んでいると、孤島や閉ざされた場所で複数の人物が次々と事件に巻き込まれる作品に出会うことがあります。その代表例として、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』と綾辻行人の『十角館の殺人』はよく比較されます。
どちらもクローズドサークル(外部との接触が困難な状況)を舞台にした本格ミステリーですが、発表された時代や作品の狙い、トリックの方向性には大きな違いがあります。この記事では、2作品の関係や影響、どちらが先に書かれたのかを分かりやすく解説します。
『そして誰もいなくなった』と『十角館の殺人』はどちらが先に書かれたのか
発表時期を比較すると、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』の方がはるかに先に発表されています。
『そして誰もいなくなった』は1939年に発表された作品で、世界的なミステリーの名作として知られています。一方、綾辻行人の『十角館の殺人』は1987年に発表された日本の本格ミステリー作品です。
そのため、時系列だけを見ると『十角館の殺人』が『そして誰もいなくなった』より後に登場した作品になります。
『十角館の殺人』は『そして誰もいなくなった』の真似なのか
両作品には「孤島」「複数の登場人物」「連続殺人」という共通点があります。そのため、似ていると感じる読者がいるのは自然なことです。
しかし、『十角館の殺人』は単純な模倣作品ではありません。綾辻行人は、海外本格ミステリーの伝統を受け継ぎながら、日本独自の新しい本格ミステリーを作り上げた作品として評価されています。
本格ミステリーでは、限られた場所や登場人物の中で謎解きを行う「クローズドサークル」という形式自体が一つのジャンルとして確立しています。そのため、同じ形式を使った作品が存在することは珍しくありません。
2つの作品に共通する魅力
『そして誰もいなくなった』と『十角館の殺人』の共通点は、読者が探偵役となって犯人を推理できる構成にあります。
外部から助けを呼べない環境に登場人物を集めることで、犯人候補を限定し、読者に「この中に犯人がいる」という緊張感を与えています。
また、登場人物の一人ひとりに秘密や疑惑を持たせることで、読者は最後まで誰を信用してよいのか分からない状態で物語を読み進めることになります。
『そして誰もいなくなった』と『十角館の殺人』の違い
舞台設定の違い
『そして誰もいなくなった』では、孤島に招待された10人の人物が事件に巻き込まれていきます。閉ざされた環境の中で、一人ずつ減っていく恐怖が大きな特徴です。
一方、『十角館の殺人』では、大学ミステリー研究会のメンバーが孤島の館を訪れ、館の名前にもある「十角形の建物」を舞台に事件が展開されます。
読者への仕掛けの違い
『そして誰もいなくなった』は、犯人が誰なのかという謎と、人間心理の恐怖を楽しむ作品です。
『十角館の殺人』は、読者の推理そのものを揺さぶる本格ミステリーとして知られており、特に終盤に用意された大きな仕掛けによって、日本ミステリー史に残る作品となりました。
『十角館の殺人』が高く評価された理由
『十角館の殺人』は、海外ミステリーの伝統を取り入れながら、日本の読者に向けた新しい本格推理小説として登場しました。
1980年代の日本では、社会派ミステリーが人気を集める一方で、本格的な謎解きを重視する作品への関心も高まっていました。その中で綾辻行人の作品は、本格ミステリー復興の流れを作った作品の一つとされています。
つまり、『十角館の殺人』は過去の名作から影響を受けながらも、それを日本独自の感性で発展させた作品と言えます。
まとめ|『十角館の殺人』は模倣ではなく本格ミステリーの流れを受け継いだ作品
『そして誰もいなくなった』は1939年、『十角館の殺人』は1987年に発表されており、先に登場したのはアガサ・クリスティの作品です。
ただし、『十角館の殺人』は単なる真似ではなく、クローズドサークルというミステリーの伝統的な形式を受け継ぎながら、日本独自のトリックや構成で新しい魅力を生み出した作品です。
両作品を読み比べることで、海外ミステリーの古典から現代日本の本格ミステリーへと続く歴史や、それぞれの作品が持つ面白さをより深く楽しむことができます。


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