「言いたいことはあるのに、うまい言葉が出てこない」「感想を聞かれると、つい『やばい』『まじ』『うける』で終わってしまう」。そんなとき、本を読んで語彙力を増やそうと考える人は少なくありません。
ただし、語彙力を伸ばすために難解な文学作品を無理に読む必要はありません。むしろ最初は、自分が面白いと思える読みやすい本を選び、出会った言葉を実際に使ってみることのほうが重要です。
この記事では、語彙力を増やしたい読書初心者に向けて、本の選び方、おすすめのジャンルや書籍、読んだ言葉を自分のボキャブラリーに変える方法まで具体的に解説します。
- そもそも「語彙力がある」とはどういうこと?
- 語彙力を増やすなら、まず読みやすい小説から始める
- 初心者でも読みやすい小説の候補
- 直接ボキャブラリーを増やしたいなら語彙本も役立つ
- 小説と語彙本はどちらを読むべき?
- 「難しい本を読めば語彙力が上がる」とは限らない
- 本を読むだけでは「使える語彙」にならないこともある
- 「やばい」を禁止すると表現の練習になる
- 読書後に3行だけ感想を書く
- 分からない単語は全部調べなくてもいい
- 電子書籍も語彙力アップと相性がいい
- 漫画やライトノベルでも意味はある?
- 会話の語彙を増やしたいならエッセイもおすすめ
- 説明する力を伸ばしたくなったら新書へ進む
- 語彙力を伸ばすおすすめの読書ルート
- 語彙力は「たくさん知る」より「少しずつ使う」
- まとめ:最初の一冊は「難しい本」より「読み切れる本」を選ぼう
そもそも「語彙力がある」とはどういうこと?
語彙力というと「難しい言葉をたくさん知っていること」と思われがちですが、それだけではありません。重要なのは、状況や感情に合わせて適切な言葉を選択できることです。
例えば「この映画やばかった」という一言にも、「感動した」「衝撃を受けた」「緊張感があった」「予想外だった」「圧倒された」「後味が悪かった」など、実際にはさまざまな意味が隠れています。「やばい」が悪い言葉なのではなく、その先にある感覚を言葉にできると表現の幅が広がります。
同じように「まじでうける」も、「思わず吹き出した」「発想が秀逸だった」「意外性があって面白かった」「くだらなさが絶妙だった」などと言い換えられます。知っている言葉の数と、場面に合わせて使える言葉の数の両方を増やすことが語彙力アップにつながります。
語彙力を増やすなら、まず読みやすい小説から始める
普段ほとんど本を読まない人が、いきなり古典文学や難しい評論から始めると、内容を理解することだけで疲れてしまうことがあります。最初の一冊には、現代を舞台にした読みやすい小説がおすすめです。
小説の利点は、単語だけではなく「その言葉がどんな場面で使われるのか」まで一緒に覚えられることです。人物の感情、会話、風景などが文章で表現されるため、自分なら「やばい」で済ませていた感覚を作者がどのように言語化しているのかを見ることができます。
特に会話文の多い作品は読書初心者でも進めやすい傾向があります。ミステリー、恋愛、青春、ファンタジーなど、自分が普段ドラマやアニメで好んで見るジャンルから選んでも問題ありません。
初心者でも読みやすい小説の候補
最初の候補として挙げやすいのが、東野圭吾の作品です。ミステリーとして物語を追いやすく、普段あまり小説を読まない人でも比較的入りやすい作品が多数あります。「手紙」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などから興味のあるものを選ぶ方法があります。
辻村深月の作品も、人間関係や登場人物の心理が丁寧に描写されています。「かがみの孤城」は物語として読み進めやすく、人の感情を表現する文章に触れたい場合の候補になります。
短い文章から始めたいなら星新一のショートショートも選択肢です。一作品が短いため「長編小説を最後まで読めるか不安」という人でも区切りながら読み進められます。大切なのは有名作品を制覇することではなく、読書を途中でやめない難易度からスタートすることです。
直接ボキャブラリーを増やしたいなら語彙本も役立つ
小説とは別に、「知らない言葉を効率よく増やしたい」という目的なら語彙をテーマにした本を併用できます。
例えば齋藤孝『大人の語彙力ノート』は、普段使いがちな表現を別の言い方へ置き換えるという観点から読める一冊です。日常会話だけでなく、仕事など少し改まった場面での表現を知りたい場合にも使えます。
山口謠司『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』のように、語彙そのものをテーマにした本もあります。このタイプは小説とは違って最初から最後まで一気に読む必要はなく、気になった項目を少しずつ読む辞書的な使い方もできます。
小説と語彙本はどちらを読むべき?
おすすめは一方に絞らず、目的に合わせて組み合わせる方法です。小説には文脈の中で自然な日本語に触れられる利点があり、語彙本には短時間で多くの表現を知れる利点があります。
| 読み物 | 向いている目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小説 | 自然な表現を身につける | 言葉を文脈ごと覚えやすい |
| エッセイ | 日常的な表現を増やす | 比較的読みやすい |
| 語彙本 | 短期間で言葉を知る | 言い換え表現を探しやすい |
| 新書 | 説明する言葉を増やす | 論理的な文章に触れられる |
| 新聞・評論 | 社会的・抽象的な語彙を増やす | やや難易度が高い |
例えば通勤・通学中には小説を読み、自宅で語彙本を5分だけ読む、といった組み合わせでも十分です。
「難しい本を読めば語彙力が上がる」とは限らない
語彙力をつけようとして、いきなり夏目漱石、芥川龍之介、太宰治などの文学作品を選びたくなることもあります。もちろん優れた作品ですが、読書習慣のない人が「勉強だから」と無理をして読む必要はありません。
特に古い作品では、現在の日常会話ではあまり使わない言葉や言い回しも登場します。文学として楽しむことには大きな価値がありますが、「今日から会話の表現を増やしたい」という目的なら現代小説やエッセイのほうが取り組みやすい場合があります。
本を選ぶときは、最初の数ページを読んでみて「続きが気になる」と感じるかを基準にして構いません。語彙力を伸ばす読書では、難易度より継続できることが重要です。
本を読むだけでは「使える語彙」にならないこともある
読書を続けると「見れば意味が分かる言葉」は自然に増えていきます。一方、自分で話したり書いたりするときに出てくる言葉を増やすには、もう一段階の練習が必要です。
例えば小説で「辟易する」という表現を見つけ、意味を調べて理解しても、それだけでは自分の会話で使えるとは限りません。「毎日のように同じ自慢話を聞かされて辟易した」のように、自分で一文作ってみると記憶に残りやすくなります。
知らない言葉をすべてノートに書く必要はありません。「これ、自分も使ってみたい」と思った言葉だけ拾うくらいでも十分です。
「やばい」を禁止すると表現の練習になる
日常的に「やばい」をよく使うなら、一人で文章を書くときだけ「やばい禁止」というルールを作る方法があります。
例えば、おいしいラーメンを食べて「このラーメンやばい」と思ったら、そこで一度止まります。「何がやばかったのか?」と考えると、「スープが濃厚だった」「香りが食欲をそそった」「想像以上に辛かった」「量が圧倒的だった」など、具体的な表現へ分解できます。
映画についても同様です。「ラストがやばかった」を「伏線の回収が鮮やかだった」「結末が予想を裏切った」「見終わってもしばらく余韻が残った」などへ変換できます。この練習を続けると、知識として覚えた単語を実際に使う機会が増えます。
読書後に3行だけ感想を書く
語彙力を伸ばすうえで取り入れやすい方法が、読んだ本について短い感想を書くことです。長い読書感想文を書く必要はありません。
例えば「①面白かったところ」「②印象に残った人物や言葉」「③なぜそう感じたのか」の3点だけを書きます。「面白かった」で止めず、「登場人物の価値観が途中で逆転する構成が面白かった」と一段具体的にすると、言葉を選ぶ練習になります。
SNSやスマートフォンのメモでも構いません。読書によるインプットと、自分の文章を書くアウトプットをセットにすることがポイントです。
分からない単語は全部調べなくてもいい
初心者が読書を嫌いになりやすい原因の一つが、知らない単語が出るたびに辞書を引くことです。数行ごとに読書が中断されると、物語そのものを楽しみにくくなります。
意味を知らなくても文章全体を理解できるなら、そのまま読み進めても構いません。同じ単語が何度も登場したり、意味が分からないと内容を理解できなかったりしたときに調べれば十分です。
一方、「この表現は使ってみたい」と感じた言葉は積極的に調べます。意味だけでなく例文まで確認すると、実際の使い方も理解しやすくなります。
電子書籍も語彙力アップと相性がいい
紙の本にこだわる必要もありません。電子書籍端末や読書アプリには、文章中の知らない言葉を選択して辞書で調べられる機能を備えているものがあります。
辞書を別に開く手間が少なくなるので、知らない単語を確認しながらテンポよく読書を続けられます。移動中に読む場合にも便利です。
逆に紙の本のほうが集中できる人もいます。語彙力への効果を左右するのは媒体そのものではなく、継続して文章に触れられるかどうかです。
漫画やライトノベルでも意味はある?
漫画やライトノベルから始めても問題ありません。特に普段まったく本を読まない場合は、興味のある作品から文章に触れる習慣を作ることに意味があります。
ただし漫画は絵によって状況や感情を説明できるため、一般的な小説より文章量が少なくなる傾向があります。語彙を増やすことだけを目的とするなら、小説やエッセイなど文章中心の本も少しずつ加えるとよいでしょう。
例えば好きな漫画の原作小説や、自分の好きなアニメと近いジャンルの小説へ移ると、読書への抵抗感を減らしながら文章量を増やせます。
会話の語彙を増やしたいならエッセイもおすすめ
小説がどうしても苦手なら、エッセイという選択肢があります。作者自身の体験や日常について書かれているため、物語の設定や多数の登場人物を覚える必要がなく、比較的気軽に読めます。
エッセイでは、何気ない出来事を作者がどのように観察し、どのような言葉で表現しているのかを楽しめます。「自分だったら『楽しかった』で終わる出来事を、こんなふうに表現できるのか」と気づくこともあります。
好きな作家、芸能人、文化人などのエッセイから入る方法もあります。興味のあるテーマなら読書習慣を作りやすくなります。
説明する力を伸ばしたくなったら新書へ進む
ある程度読書に慣れてきたら、新書にも挑戦できます。歴史、科学、社会、心理、言語など一つのテーマについて一般向けに解説した本が多数あります。
小説が感情や情景を表す言葉を学びやすいのに対して、新書では「つまり」「一方で」「したがって」といった論理の組み立てや、抽象的な概念を説明する表現に多く触れられます。
「感想だけでなく、自分の考えをきちんと説明できるようになりたい」と感じ始めた段階で取り入れると、語彙の種類を広げやすくなります。
語彙力を伸ばすおすすめの読書ルート
何から始めればいいか迷う場合は、最初から大量の本を買う必要はありません。まず一冊読み切ることを目標にします。
第1段階:興味のある読みやすい小説またはエッセイを一冊読む。
第2段階:気に入った作者の別作品を読む。
第3段階:語彙本を一冊追加する。
第4段階:興味のある分野の新書を読む。
第5段階:古典や文学作品など、少し難しい文章にも挑戦する。
この順番でなければならないわけではありません。「読みたい」と思った本があるなら、そちらを優先して構いません。図書館を利用して何冊か試し読みし、自分と相性のよい作家を探すのもおすすめです。
語彙力は「たくさん知る」より「少しずつ使う」
一日に50個の単語を暗記するより、一日に一つでも新しい表現を覚えて実際に使うほうが、日常的なボキャブラリーとして定着しやすくなります。
例えば今日「印象的」という言葉を意識したなら、「あの映画やばかった」ではなく「あの映画はラストシーンが特に印象的だった」と言ってみます。翌日は「魅力的」、次の日は「圧倒的」というように、一つずつ表現を増やしていきます。
「やばい」「まじ」「うける」を完全に使わなくする必要もありません。友人との会話では便利で自然な言葉です。必要な場面で別の表現も選択できるようになることが、語彙力を身につける本当の目的です。
まとめ:最初の一冊は「難しい本」より「読み切れる本」を選ぼう
語彙力を増やすための読書では、難しい本から始める必要はありません。東野圭吾や辻村深月などの比較的読み進めやすい小説、星新一のショートショート、興味のある人物のエッセイなど、自分が続きを読みたいと思える本から始める方法があります。
言葉そのものを効率的に学びたい場合は、『大人の語彙力ノート』などの語彙本を併用し、読書に慣れてから新書や文学作品へ範囲を広げると無理がありません。
そして読書以上に大切なのが、覚えた表現を使うことです。「やばかった」で終わりそうになったら「何が、どんなふうに?」と一度考え、別の言葉で説明してみましょう。読む→言葉を知る→意味を確認する→自分で使うという流れを繰り返すことで、知っているだけの言葉が少しずつ自分で使える語彙へ変わっていきます。


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