講義の合間に友人と話したり、サークルに顔を出したり、アルバイトをしたり、恋をしたり、将来について悩んだり。大学生活そのものを物語として楽しめる小説には、派手な事件を中心とした作品とは違う魅力があります。
特に、しばらく読書から離れていた人が再び小説を読み始める場合には、登場人物の生活を追いながら自然に物語へ入れる青春小説や日常小説が向いています。近年の作品を中心に探すなら、大学のサークル活動を描いた『青くて痛くて脆い』なども候補になります。
この記事では、大学生が主人公、大学が重要な舞台、あるいは大学生ならではの日常や人間関係を楽しめることを軸に、おすすめ作品を紹介します。大学生活の描かれ方は作品ごとにかなり違うため、読みたい雰囲気から選んでみてください。
- 大学生の日常を読みたいなら、まず押さえたい作品
- 『青くて痛くて脆い』住野よる|現代の大学生活とサークルの人間関係
- 『砂漠』伊坂幸太郎|大学生の友情を楽しみたいなら定番
- 『キケン』有川浩|大学サークルの馬鹿馬鹿しくも楽しい青春
- 『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦|京都の大学生活を幻想的に楽しむ
- 『四畳半神話大系』森見登美彦|サークル選びから始まる奇妙な大学生活
- 『何者』朝井リョウ|就活期の大学生をリアルに描く
- 『ホーンテッド・キャンパス』櫛木理宇|大学の日常にホラーを足したシリーズ
- 少し前の作品も含めるなら『ノルウェイの森』も外せない
- 日常系が好きなら「大事件が起きない小説」まで範囲を広げる
- 15年ぶりの読書なら、読みやすさから選ぶのもおすすめ
- 大学生活のどの部分を読みたいかで作品を選ぶ
- まとめ|大学生の日常小説は大人になってから読むのも面白い
大学生の日常を読みたいなら、まず押さえたい作品
「大学生の日常」といっても、リアルな学生生活を淡々と描く作品から、大学生活を土台に恋愛や青春を大きく膨らませた作品まで幅があります。
そこで、大学生活らしさを感じやすい代表的な作品を簡単に比較すると次のようになります。
| 作品 | 著者 | 主な魅力 | 雰囲気 |
|---|---|---|---|
| 青くて痛くて脆い | 住野よる | 大学・サークル・人間関係 | 青春、ほろ苦い |
| 砂漠 | 伊坂幸太郎 | 大学生活・友情・成長 | 爽やか |
| キケン | 有川浩 | 大学サークル | 笑える、熱い |
| 夜は短し歩けよ乙女 | 森見登美彦 | 京都・大学生・恋愛 | 幻想的、コミカル |
| 四畳半神話大系 | 森見登美彦 | サークル・大学生活 | 個性的、コミカル |
| 何者 | 朝井リョウ | 就職活動・人間関係 | リアル、シビア |
| ホーンテッド・キャンパス | 櫛木理宇 | 大学・オカルト研究会 | 青春+ホラー |
大学生活をそのまま味わいたいなら『砂漠』、サークルの空気を楽しみたいなら『キケン』、現代的な学生同士の人間関係まで読みたいなら『青くて痛くて脆い』が入りやすいでしょう。
『青くて痛くて脆い』住野よる|現代の大学生活とサークルの人間関係
比較的新しい大学生小説から選ぶなら、住野よるの『青くて痛くて脆い』は有力な一冊です。主人公の田端楓は大学で秋好寿乃と出会い、二人で理想を実現するための秘密結社「モアイ」を作ります。
ところが、物語は単純なキラキラしたサークル青春物語ではありません。小さく始まった集団が大きくなることで理念が変化し、そこへ友情、嫉妬、自己正当化などが絡んでいきます。
大学という場所で初めて自分の居場所を作り、人と出会い、その関係が少しずつ変わっていく感覚が物語の重要な部分です。爽やかな青春だけでなく、若い時期特有の痛さまで読みたい人に向いています。
『砂漠』伊坂幸太郎|大学生の友情を楽しみたいなら定番
伊坂幸太郎の『砂漠』は、大学に入学した北村を中心に、西嶋、鳥井、南、東堂という学生たちの大学生活を描く青春小説です。
麻雀、合コン、恋愛、友情など、大学生らしい出来事が次々に登場します。一方で、ただ学生が遊んでいるだけの物語ではなく、それぞれの価値観や成長が描かれているのが魅力です。
「大学時代って、こういう仲間と意味もなく集まっていたな」と感じられるタイプの作品なので、すでに学生時代を終えた大人が読むと、若い頃を思い出すような楽しみ方もできます。
『キケン』有川浩|大学サークルの馬鹿馬鹿しくも楽しい青春
大学生の日常の中でも、特にサークル活動の楽しさを読みたい場合におすすめなのが有川浩の『キケン』です。
舞台となるのは成南電気工科大学の機械制御研究部。略称が「機研」で、そこから「キケン」と呼ばれる一癖も二癖もある集団の青春が描かれます。
大学祭や部活動、先輩と後輩の関係など、学生だからこそ全力になれる出来事が魅力です。重すぎる物語よりも、笑えてテンポよく読める青春小説を探している人に向いています。
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦|京都の大学生活を幻想的に楽しむ
森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』は、京都を舞台に大学生たちの恋と奇妙な出来事を描いた作品です。
主人公の「先輩」は、思いを寄せる「黒髪の乙女」と偶然を装って何度も出会おうとします。しかし物語は普通のキャンパス恋愛小説には収まらず、京都の街を舞台に現実と幻想が混ざったような世界へ広がっていきます。
純粋な「大学生の日常」のリアルさより、学生時代にしか成立しなさそうな自由で少し奇妙な時間を味わえる作品です。文章にも独特のリズムがあるため、世界観にハマると森見作品を続けて読みたくなるでしょう。
『四畳半神話大系』森見登美彦|サークル選びから始まる奇妙な大学生活
同じ森見登美彦作品でも、大学生活そのものをより前面に出しているのが『四畳半神話大系』です。
主人公は京都の大学に通う三回生。「一年生のときに別のサークルを選んでいたら、自分の大学生活はもっと素晴らしいものになっていたのではないか」という発想を軸に、異なる可能性の大学生活が展開されます。
大学に入ったときには誰でも「これから特別な青春が始まるかもしれない」と期待するものです。しかし実際には思い通りにならない。その理想と現実のずれを極端かつコミカルに描いている点が、この作品のおもしろさです。
『何者』朝井リョウ|就活期の大学生をリアルに描く
大学生活の後半、特に就職活動をする学生たちの心理を読みたいなら、朝井リョウの『何者』があります。
就職活動をきっかけに集まった大学生たちは、情報交換をしながら内定を目指します。しかしSNSで見せる自分と本音、他人への嫉妬、自己評価と現実の差などが徐々に浮かび上がります。
楽しいキャンパスライフというより、学生から社会人へ移る直前の大学生の息苦しさを描いた作品です。2013年には第148回直木三十五賞を受賞しています。
『ホーンテッド・キャンパス』櫛木理宇|大学の日常にホラーを足したシリーズ
大学生の日常だけでは少し物足りず、ジャンル小説としての楽しさも欲しい人には、櫛木理宇の『ホーンテッド・キャンパス』があります。
主人公の八神森司は幽霊が見える大学生で、片思いしているこよみとの距離を縮めたいこともあってオカルト研究会に所属します。大学生活や恋愛に、怪異にまつわる事件が組み合わされた青春ホラーです。
2012年刊行の第1作は第19回日本ホラー小説大賞読者賞受賞作です。怖さだけを追求した作品ではなく、学生たちの恋愛やサークル活動もシリーズの魅力なので、長く付き合える作品を探している場合にも候補になります。
少し前の作品も含めるなら『ノルウェイの森』も外せない
近年の作品ではありませんが、「大学生を描いた小説」というテーマなら村上春樹の『ノルウェイの森』も代表的な一冊です。
主人公のワタナベは東京の大学に通う学生で、直子や緑との関係を通じて、恋愛、喪失、生と死に向き合っていきます。サークルや大学祭を楽しむ青春小説とはかなり方向性が異なり、大学生という人生の不安定な時期の孤独が印象的に描かれています。
明るい学生生活を読みたい人には最初の一冊として重いかもしれませんが、大人になってから読み返すことで若い頃とは違う受け取り方ができる作品でもあります。
日常系が好きなら「大事件が起きない小説」まで範囲を広げる
「大学生の日常を切り取ったような作品」を探している場合、必ずしも主人公が現役大学生であることにこだわる必要はありません。
例えば住野よるの『麦本三歩の好きなもの』は、大学図書館で働く20代の女性・麦本三歩の日常を描いた連作短編集です。朝寝坊をしたり、食べ物を楽しんだり、職場の人と過ごしたりする、ごく普通の日々が物語になります。
大学生そのものを描く作品ではありませんが、ドラマチックな事件より「誰かの普通の一日」を覗く感覚が好きなら相性のよい作品です。久しぶりの読書で長編を読む集中力が戻っていない場合にも、短編・連作短編は入りやすいでしょう。
15年ぶりの読書なら、読みやすさから選ぶのもおすすめ
長期間読書から離れていた場合、「名作だから」という理由だけで長大な作品を選ぶ必要はありません。最初はページをめくりやすく、登場人物や状況を把握しやすい作品を選ぶほうが読書習慣を取り戻しやすくなります。
例えば、明るい青春ものなら『キケン』、友情をじっくり味わうなら『砂漠』、現代的な若者の人間関係なら『青くて痛くて脆い』、少し変わった世界観なら『夜は短し歩けよ乙女』という選び方ができます。
また「昔読んでいた頃と好みが変わった」と感じても不思議ではありません。15年という時間が経てば、学生目線ではなく親や社会人の目線から登場人物を見ることもあり、それも読書を再開する面白さの一つです。
大学生活のどの部分を読みたいかで作品を選ぶ
作品選びに迷ったら、「大学生」という条件をもう一段細かく分けると選びやすくなります。
- 友達との何気ない時間:『砂漠』
- サークル活動:『キケン』『四畳半神話大系』
- 現代的な人間関係:『青くて痛くて脆い』
- 恋愛と京都の街:『夜は短し歩けよ乙女』
- 就職活動:『何者』
- 大学+ホラー:『ホーンテッド・キャンパス』
- 孤独や喪失:『ノルウェイの森』
同じ大学生小説でも読後感は大きく違います。「大学生が出てくる作品」だけで選ぶより、自分がもう一度味わいたい学生時代の感覚から選ぶほうが好みの一冊に出会いやすくなります。
まとめ|大学生の日常小説は大人になってから読むのも面白い
大学生の日常を描いた小説には、講義やサークルといった表面的な学生生活だけでなく、友情、恋愛、将来への不安、就職活動、自意識など、その時期特有の感情が詰まっています。
まず一冊選ぶなら、大学生活と友情をバランスよく楽しめる『砂漠』、サークル青春ものとして読みやすい『キケン』、比較的新しい感覚の大学生像を読みたいなら『青くて痛くて脆い』が候補になります。幻想的で少し変わった作品が好きなら森見登美彦作品もおすすめです。
学生だった頃に読む大学生小説と、子育てや仕事などさまざまな経験を経てから読む大学生小説では、同じ場面でも感じ方が変わります。読書を久しぶりに再開するときこそ、かつて自分にもあった学生時代を覗き直すような一冊から始めてみるのもよいでしょう。


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