小型犬の中でも人気の高い犬種、ポメラニアン(Pomeranian)。その愛らしい容姿から飼いやすいと思われがちですが、実は“気管虚脱(気道の狭窄・崩壊)”や“脱毛症(アロペシアX/Black Skin Disease)”といった健康リスクが指摘されています。本記事では、それらの疾患がポメラニアンでどれほど多いか、どのように対策すればいいかを整理します。
気管虚脱とはどんな病気か
気管虚脱(トラキアル・コラプス)は、気管(風管)の軟骨輪や膜状構造が弱まり、呼吸時に気管が潰れたり狭窄したりすることで、呼吸困難や「ガチョウの鳴き声」のような咳(“ガチョウホンホン・クックッ”音)を起こす疾患です。[参照]
小型犬種に多く、特に胸腔内の気管部位での発生が報告されており、治療としてはハーネスの使用、体重管理、咳の制御、炎症抑制、重症例では手術(ステントや外輪挿入)などがあります。[参照]
ポメラニアンと気管虚脱:発症率・傾向は?
ポメラニアンの疫学データでは、気管虚脱の“他犬種比で非常に高い”と明記された大規模研究は限られていますが、症例報告や犬種ガイドでは「ポメラニアンを含むトイ・小型犬種で気管虚脱が比較的多い」とされています。[参照] また、獣医マットリアルでも「ポメラニアンでは気管虚脱が起こりやすい犬種カテゴリに入る」と記されています。[参照]
つまり、「気管虚脱になりやすい可能性が高めである」という意味では“多い犬種”と言えますが、「必ず発症する」というわけではありません。
脱毛症(アロペシアX/Black Skin Disease)とは何か
アロペシアX(別名“Black Skin Disease”)は、主に長毛・密毛種の犬に見られる体幹部の脱毛・皮膚の色素沈着を伴う疾患です。原因は完全に解明されておらず、“毛周期停止”・ホルモン異常・遺伝的素因が関係する可能性が示唆されています。[参照]
症状としては、尾部・太もも付近から始まる毛の減少・脱毛・皮膚の黒ずみ・体毛が薄くなるといった変化が挙げられ、「美容上の問題」とされることが多いですが、飼い主・ブリーダーにとっては犬の将来の健康管理・繁殖管理上注意が必要な疾患です。[参照]
ポメラニアンとアロペシアX:どれくらい“多い”か?
文献によれば、ポメラニアンはアロペシアXの発症傾向が極めて高い犬種のひとつとされています。例えば、ある日本の症例報告では、アロペシアX症例のうち79.3 %がポメラニアンというデータもあります。[参照]
また、最近の遺伝研究では“ポメラニアンにおいて毛周期停止を示すHCA(Hair Cycle Arrest)に関連するミトコンドリア遺伝子変異が多数確認された”という発表もあり、遺伝的素因が関与している可能性が高いです。[参照]
ポメラニアンを迎える・飼うときのケアポイント
ポメラニアンを飼う際には、気管虚脱・アロペシアXそれぞれについて以下のケアが有効です。
- 気管虚脱対策:ハーネスを使用し、首輪での牽引を避ける。肥満を防ぎ適正体重を維持する。咳が続く・「鳴くような咳(ホンホン)」が出たら早めに動物病院を受診。
- アロペシアX対策:異常な毛量減少・皮膚の黒ずみなどを確認し、早めの獣医相談を。健康診断時に皮膚・被毛の状態もチェック。繁殖を考える場合は、疾患の既往や家系歴をブリーダーに確認。
- 健康維持一般:定期的な獣医師検診、適正な栄養・運動、ストレス管理、小型犬特有の口腔・歯のケアを怠らない。
これらを日常的に実践することで、リスクが高めとされる犬種ではあっても、発症を“完全に防ぐ”わけではないものの、発症時の早期発見・早期対処につながります。
まとめ
ポメラニアンは、気管虚脱およびアロペシアX(脱毛症)という疾患に「比較的高い発症傾向があるとされる犬種」であることが、獣医学・ブリーディング界の文献で支持されています。とはいえ、すべてのポメラニアンがこれらを発症するわけではありません。
重要なのは、飼い主として「その犬種にはリスクがある」という認識を持ち、日常のケアと獣医師との連携をしっかり行うことです。ポメラニアンとの楽しく安心な暮らしを支えるために、適切なケアを実践しましょう。


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