シェイクスピアの戯曲『マクベス』では、登場人物たちの行動や運命を象徴する重要なモチーフとして「血」が繰り返し登場します。この「血」というモチーフは、単なる暴力や死を表すだけでなく、登場人物の内面的な変化や心理状態を象徴しています。本記事では、『マクベス』における「血」の象徴的な意味とその心理的な影響について探ります。
1. 血のモチーフとマクベスの道徳的堕落
『マクベス』における最も顕著な「血」の象徴は、マクベスが王位を奪うためにダンカン王を殺害する場面です。血はここで殺人と暴力の象徴として登場しますが、マクベスはその行為を経て、心理的に深刻な変化を迎えることになります。彼の罪の意識と後悔が「血」を強調し、彼を精神的に追い詰めます。この血の象徴は、彼の道徳的堕落と無限の罪悪感を示す重要な要素です。
マクベスの精神状態が悪化するにつれて、彼はしばしば血に関する幻覚を見たり、心の中でその血を「洗い流す」ことを考えたりします。この血のイメージは、彼の心の中で暴力と殺人が支配していることを強調し、彼が後戻りできない地点に達していることを示唆しています。
2. レディ・マクベスと血の象徴
レディ・マクベスもまた、血の象徴と深く結びついています。彼女は最初、マクベスに対して王位を取るよう強く促しますが、その結果として起きる暴力と血を無視することはありません。彼女は最初、血を流すことに躊躇しないものの、次第にその血が彼女を精神的に追い詰めていきます。特に有名なのは、彼女が「血の手」を洗い続けるシーンです。この行動は、彼女が罪悪感と後悔に囚われていることを象徴しています。
「血」を洗おうとする行動は、彼女が自身の罪を悔い改め、償おうとしていることを示していますが、その無力感もまた強調されています。彼女は結局、精神的な崩壊を迎え、血によって追い詰められます。
3. 「血」の象徴的意味:罪と贖いのプロセス
『マクベス』の「血」は、単なる肉体的な暴力を超えて、罪と贖いのテーマにも深く関わっています。マクベスとレディ・マクベスは、最初は「血」を流すことによって権力を手に入れますが、最終的にはその「血」が彼らを破滅に導きます。血は、彼らの過ちがもたらした報いであり、罪を償う手段としても描かれます。
物語が進むにつれて、血の象徴は無限の後悔と償いの試みを示しますが、どちらも結局は達成されることはありません。このことは、悲劇的な終焉へとつながります。
4. 結論:血のモチーフの心理的意義
『マクベス』における「血」のモチーフは、登場人物たちの道徳的堕落、罪悪感、そして精神的な崩壊を象徴しています。血は、単なる暴力の表現ではなく、罪と贖い、心の葛藤を表す重要な要素です。マクベスとレディ・マクベスは、血によって自らの運命を形作り、最終的にはその重さに押し潰されていきます。この「血」のモチーフは、シェイクスピアの深い人間理解を反映した心理的な象徴として、今なお多くの人々に強い印象を与えています。


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