『殺戮にいたる病』は、非常に複雑で深い物語構成を持つ作品で、登場人物たちの視点や行動が巧妙に絡み合い、読者に強い印象を与えます。質問者様が挙げたシーンについて、詳しく解説し、疑問を解消するためのポイントを整理していきます。
1. 雅子視点と信一の描写
まず、雅子視点の信一に関する部分ですが、信一は稔が殺人犯だと疑っており、夜中に頻繁に出掛けたり、稔の8ミリフィルムを盗んで調査していたという描写は確かにあります。しかし、雅子自身も信一の不審な行動を見て、信一を疑い始めていることが示唆されています。これにより、物語の中で双方の視点が交錯し、緊張感が高まります。
2. 赤黒い血とゴミ箱の描写について
質問者様が言及された「赤黒い血がゴミ箱から出てきた」という描写は、物語の中で非常に象徴的な意味を持っています。これは、稔が過去に埋めたものを信一が掘り起こして持ち出した場面と関連している可能性があります。信一がその物を持ち帰り、ゴミ箱に入れるという行動は、過去の秘密や罪を象徴的に示唆していると言えます。
3. 時系列と物語の矛盾について
信一が稔の埋めた物を持ち帰り、ゴミ箱に入れたという描写と、実際に赤黒い血が出てきた時期が矛盾している点については、物語の中で意図的な時間のズレを作り、読者に不安や混乱を与えるための手法であると考えられます。このような描写によって、作品全体に不安定で曖昧な空気が漂い、登場人物の心理状態を反映しているのです。
4. まとめと考察
『殺戮にいたる病』は、非常に詳細で緻密な構成が特徴の小説です。登場人物の視点が交錯することで、物語の解釈において多様な見方が可能となり、読者に深い印象を与えます。質問者様の疑問に関しても、物語の構造や描写の意図を理解することで、より一層深い理解が得られることでしょう。
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