サド侯爵夫人の出版差異|式場隆三郎版と三島由紀夫版の違い

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「サド侯爵夫人」は、フランスの作家ドヌヴァン・ド・サドの作品を基にした文学作品で、いくつかの版が存在します。式場隆三郎がコバルト新書から昭和31年に発行したものと、三島由紀夫が手がけた版は、それぞれ異なる特徴を持っています。本記事では、これらの版における違いについて解説し、それぞれがどのように異なっているのかを詳述します。

式場隆三郎版(コバルト新書)の特徴

式場隆三郎が手がけた「サド侯爵夫人」の版は、昭和31年にコバルト新書から出版されました。この版は、サドの作品を翻訳し、日本の読者に向けて再構成したもので、サドの思想や社会的背景を比較的分かりやすく解説しています。式場はサドの作品の文学的価値を強調し、サドの思想が持つ道徳的・倫理的観点を日本の文脈に照らし合わせて注釈を加えています。

また、この版ではサドが描いた過激なテーマや社会的タブーについても深く掘り下げており、当時の日本における倫理観をも考慮に入れた形で内容が編集されています。そのため、文学的な側面を重視した翻訳が施されています。

三島由紀夫版の特徴

一方、三島由紀夫が手がけた版は、1960年代に発表されたもので、彼自身の思想や美学を反映させた特徴があります。三島は、サドの作品を単なる文学作品としてだけでなく、彼自身の政治的・哲学的視点を通じて再解釈しました。特に、サドが描くエロティシズムや暴力性に対する三島の独自のアプローチが色濃く現れています。

三島版では、サドの作品における衝撃的な描写や挑発的な要素をより強調し、彼の美学的視点からサドを再評価しようとしています。この版は、サドの自由と道徳に対する反骨精神を三島自身の哲学的立場から解釈し、日本文化における「美」と「倫理」の対立を深く掘り下げる内容となっています。

両者の版の違いとは?

式場隆三郎版と三島由紀夫版の主な違いは、そのアプローチの仕方にあります。式場版は、サドの作品を比較的直訳に近い形で翻訳し、日本の読者に分かりやすく提供しようとしています。文学的な価値に焦点を当て、サドの道徳的・倫理的側面に対する注釈が多く含まれています。

一方で三島版は、サドの作品を彼自身の美学的視点で再構築し、サドが描く暴力やエロティシズムに対して強い美的関心を示します。三島の哲学が色濃く反映されており、作品全体に対する読み解き方が異なります。サドを単なる作家としてではなく、思想家として捉え、彼の作品に現れる自由への挑戦や道徳への疑問を深く掘り下げています。

まとめ

式場隆三郎版と三島由紀夫版の「サド侯爵夫人」は、それぞれ異なる視点と解釈に基づいています。式場版はより文学的で、サドの道徳的側面を重視した翻訳が特徴です。一方、三島版は彼自身の哲学的美学を反映させ、サドの作品を美的・政治的視点から再評価しています。どちらの版もサドの作品を深く理解するための貴重な資料となっており、読む人によってその受け取り方が大きく異なることでしょう。

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