道尾秀介『いけないⅡ』 第一章「明神の滝に祈ってはいけない」解説と考察

道尾秀介の小説『いけないⅡ』は、その心理的な深層と緻密に組み立てられたストーリーが魅力的です。特に第一章「明神の滝に祈ってはいけない」では、主人公の大槻が抱える秘密とその背景に隠された謎に焦点が当たります。本記事では、その中でも特に印象的な、大槻が母親の死体を冷凍庫に隠し続ける理由について考察します。

1. 大槻が母親の死体を隠す理由

大槻が父親により殺された母親の死体を冷凍庫に隠していた理由については、物語の中で明確に描写されていませんが、いくつかの心理的背景を推測することができます。まず、彼が母親を殺した事実を受け入れることができず、冷凍庫に隠すことでその現実から逃れようとしていた可能性があります。

2. 心理的な背景と隠匿の意味

死体を隠す行動は、犯罪者が犯した罪から逃れようとする一種の防衛反応とも言えます。大槻は母親の死体を隠すことで、自分自身を守ると同時に、父親に対して抱える恐怖や自分の罪を直視することを避けているのかもしれません。冷凍庫という場所は、死を「冷たく保つ」象徴的な意味合いを持っているとも解釈できます。

3. 警察への通報はなぜされなかったのか

一般的には、母親の死体を発見した場合、警察に届けるのが当然です。しかし、物語の中で大槻は警察に通報することなく死体を隠し続けます。これには彼自身が持つ深い罪悪感や恐れ、そして母親との関係が影響していると考えられます。自分が犯した罪に対する恐れから、警察に届けることができなかったのかもしれません。

4. 物語の中での意図とその後の展開

道尾秀介の作品は、単なるミステリーに留まらず、登場人物の心理描写や過去のトラウマに焦点を当てることが特徴です。大槻が母親の死体を隠し続ける行動は、物語が進むにつれて、彼の内面の闇と向き合う過程として描かれるのかもしれません。この行動がどのように展開していくのか、今後の章での解明が楽しみです。

まとめ

大槻が母親の死体を冷凍庫に隠し続ける理由には、深い心理的な背景があると考えられます。彼が警察に通報せずに死体を隠し続ける行動は、物語全体における重要な伏線となっており、今後の展開に大きな影響を与える可能性があります。道尾秀介の巧妙なストーリーテリングによって、この謎がどのように解き明かされるのかが楽しみです。