角田光代『旅する本』の「空白をぼんやり眺める」の意味について

読書

角田光代さんの『旅する本』に登場する「空白をぼんやり眺める」という表現の意味について考察します。このフレーズがどのような感情や心理を表現しているのか、ヒントをもとに具体的に分析していきます。

「空白をぼんやり眺める」の意味とは?

「空白をぼんやり眺める」という表現は、一見すると物理的な空白をただ見つめることを指しているように思えますが、実際にはもっと深い心理的な意味が込められています。ここでの「空白」は、主人公が売った本に対する「喪失感」を象徴していると考えられます。物理的に何もない空間を見つめることは、内面的な喪失感や無力感を感じている状態を反映しているのです。

「ぼんやり」という言葉は、主人公がその空白を見つめながらも、感情が整理できていない状態を表しています。まるで意識がぼんやりとして、何も考えられないような不安定な感情が隠されているのです。

売った本に対する喪失感

本を売る行為は、物理的な所有から解放される一方で、心の中に残る空虚感や喪失感を生むことがあります。この喪失感は、単に物を手放すことにとどまらず、思い出や感情がそこに結びついていることが多いためです。『旅する本』においても、主人公はその本を売ることで自分自身の一部を失ったような感覚を覚え、その「空白」をぼんやりと眺めることになります。

この「空白」を見つめることは、主人公がその喪失感を認識し、向き合おうとする過程を描いていると言えるでしょう。

主人公の不安と呆然とした気持ち

「ぼんやり」とした状態は、主人公の不安や呆然とした気持ちも示しています。物事がうまく進まない時、または思い通りにいかない時に感じる「無力感」や「途方に暮れる気持ち」は、まさにこの表現が示す状態そのものです。

主人公は売った本を手放したことで、自分の中で何か重要なものを失ってしまったような気がして、そのことに対する不安や、どうしてもそれを解決できないという感情が湧いてきます。こうした感情は、生活の中で誰しもが経験するものであり、その共感から読者もこの表現に深く引き込まれるのです。

「空白をぼんやり眺める」表現の使い方

角田光代さんが「空白をぼんやり眺める」という表現を使うことで、読者は主人公の内面的な葛藤や不安をより深く感じ取ることができます。このような表現は、物理的な状況ではなく、主人公の心の中の状態を描写しており、読者に感情移入させる力を持っています。

また、「ぼんやり」という言葉が持つ曖昧さも、主人公がその状態から抜け出せないという閉塞感を強調しています。言葉で説明するのが難しい不安や喪失感が、この表現を通して伝わってきます。

まとめ

「空白をぼんやり眺める」という表現は、主人公が売った本に対して感じる喪失感と、それに伴う不安や無力感を描いています。この表現は、物理的な空間の「空白」だけでなく、心の中に広がる無意識の空白や感情の動揺を表現しており、角田光代さんの作品の深い感情表現を理解するためのキーとなります。

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